【Fender Precision Bass '57 SB/M Owned by John Entwistle 】

Fender Precision Bass '57 SB/M Owned by john Entwistle

アルダー・ボディー
   ツー・トーン・サンバースト仕上げ
   スモールヘッド、メイプル・ワンピース・ネック
   シングルコイル・ピックアップ


Fender Precision Bass '57 SB/M Owned by john Entwistle

ジョン・エントウィッスルが所有していた事を証明する【The Bass Centre】の書類。


'98年購入。
Fender Precision Bass の初期のタイプで、ボディーにコンター加工がされた第二期のモデル。
この一本はThe Who のベーシスト、故ジョン・エントウィッスル氏が所有していた物である。
彼が離婚した時、その莫大な慰謝料を払うために、200本以上あるコレクションの中から、約100本を売った。その内の一本。
彼がたくさんのコレクションを周りに並べて写っている有名な写真があるが、あの写真の左下の隅に写っているのがこのベースである。

お馴染み『ラフタイム』に入荷したのを知り、早速試奏しに行った。
このタイプを弾くのは初めてであった。

状態は非常に良く、独特の太いV型グリップのネックも意外な程弾き易かった。
音に存在感があり、何とも言えない魅力がある。
楽器自身が助けてくれないので、中途半端なピッキングをするとみっともない音が出る。
私より二つ年下のこのベース。
只でさえ珍しい上に、あのジョン・エントウィッスルの所有物であったという特別な価値もある。
出会ったのも何かのご縁と、思い切って購入した。

  梅雀仕様のオリジナル・ブリッジ。 ノーマルと裏通しの2タイプで使える。テンションをかせぐため現在は裏通しで使っている。
このブリッジの下にサスティン・プレートが埋め込まれている。

梅雀仕様のオリジナル・ブリッジ。 ノーマルと裏通しの2タイプで使える。テンションをかせぐため現在は裏通しで使っている。
このブリッジの下にサスティン・プレートが埋め込まれている。

  元々このベースに付いていた、'57年のオリジナル・ブリッジ。 ジョン・エントウィッスル本人が付けていたムーンのブリッジ。裏通しは出来ないタイプである。
 

★元々このベースに付いていた、'57年のオリジナル・ブリッジ。

★ジョン・エントウィッスル本人が付けていたムーンのブリッジ。裏通しは出来ないタイプである。

  

ブリッジは本来は二弦づつ乗せるツーピース・タイプであるが、ジョン本人の手で【Moon】の一弦づつのフォーピース・アジャスタブル・タイプに交換されていた。(オリジナルのブリッジも付属している)
そのためか各弦とも、どのポジションで弾いてもしっかりとサスティーンがあり、ピッチも正確であった。

しかしテンションが緩いので、私としては本来の裏通しのブリッジにしたかった。
ただのコレクションより使えるベースとして、この一本を生かしたかった。
そこで、当時お世話になっていた楽器屋さんの店長に頼んで、四弦独立にアジャ スト出来る裏通しのブリッジを発注してもらった。
これを製作したのは後にFreedomという名称になった工房。
このブリッジは最近のFender製の様に、普通にブリッジ・プレートに弦を通す事も出来る。
ついでだからと、ブリッジ下にサスティン・ブロックも埋め込んでもらった。
裏通しに戻すことで、音の響きに艶が出る様になった。
スラップもOKである。
それでも'57年独特の音が生きている。

  '57年まで生産されていた木製のフィンガー・レスト。

'57年まで生産されていた木製のフィンガー・レスト。

     
     
  Fender Precision Bass '57 SB/M Owned by john Entwistle Fender Precision Bass '57 SB/M Owned by john Entwistle

バンドのリハーサルで一度だけ使った。
さすがに曲を選ぶ(笑)
Led Zeppelin のジョン・ポール・ジョーンズが“Whole lotta love“で使っていた様に、ストレートで元気なロックにも向いているが、ファンキーな曲でとても良い味が出る。
Crusadersのウィルトン・フェルダー(sax,b)もこのタイプで、素晴らしくファンキーなプレイをしている。

  

2002年6月27日
The Who の北米ツアーの初日の前夜、ヤンチャをしたジョンは、
突然帰らぬ人となってしまった。
57歳だった。
彼らしい死に方ではあったが、まだまだ若い。
もったいない事だ。

ジョン所有だったベースを持っているのも『何かの縁』だと思い、
訃報を聞いてすぐに曲を作った。
彼が蜘蛛を好んでいたのに因んで
【John The Spider】
という題名を付け、私の初ソロCD『Bright Fortune』に収録した。
(曲調の関係でこのベースは使っていない)

このベースの音色は
歳を取る程に味が分かる様になる。

 

現在はTHOMASTIK INFELD(トマスティック・インフェルト)のフラット・ワウンド弦を 張って、
Ampeg B-15S EV ('70年製) でファンキーに渋く楽しんでいる♪
それはもうご機嫌な音である♪♪

私の中の、コレクター的な心を満たす一本。
何と言っても、大切な宝物である。


(写真撮影:光齋昇馬)

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