'96年購入。
全世界のベースギターの基本。'62年製Fender Jazz Bass。
そしてJacoの愛器だった。'62年製Fender Jazz Bass。
Fender社の1962年は特別な年だったのだろうか…
Precision Bass も'62年製は特別な素晴らしい音がする。
とにかく、何としても'62 Jazz Bassが欲しかった。
当時代々木駅の近くにあった楽器店『ラフタイム』
その日は、'60,'62,'63,'64,'65 と、見事にヴィンテージJazz Bassが揃っていた。
もちろんどれも目が飛び出るような値段だった。
しかし触って音を出してみなければ、本物の音も、その良さも分からない。
勇気を出して、全てを弾き比べさせてもらった。
ヴィンテージ初体験であった。
胸の高鳴りを必死に抑えて、じっくりと弾いてみた。
中でも'60,'62 の二本は特別な音だった。
'60年製は、少し荒削りな元気な音。
'62年製は、もう正にジャコのあの音。
'60年の希少価値も分かってはいたが、やっぱり長年恋い焦がれていた'62年の音にはノックアウトだった。
塗装はかなり剥げて、前の持ち主が下手な塗装で誤摩化した痕がわかる。
ボディー裏のバックル傷で剥がれた部分には、持ち主の名前が書いてある。
アメリカ人は名前を書く人が多いらしい。
ピックアップ・フェンスとブリッジカバーも、'60~'62年のモデル独特のミュート装置も、既に付属していなかった。(ネジだけは残っていた)
ブリッジは、一度バダスに換えた痕がある。
かなりの使用感である。
しかし、音と、弾き心地は本当に素晴らしい。
ネックが物凄くしっかりしているのが分かる。
ボディーもとても軽い。
付属品が無く完全オリジナル状態ではないので、'62年製 Jazz Bass にしては比較的値段は安い。
だが、根本的に高いわけで…
散々弾いて悩んだ挙げ句、一先ず家に帰った。
だが心は熱病の様に熱くなる一方だ。
今を逃したら、二度とこんなに良い音の個体には出会えないかもしれない…
明日には誰かが買ってしまうに違いない…
何といったって'62年のJazz Bassだ。
覚悟を決め、電話で買う事を伝え、翌日店に行った。
付属のハードケースも腐ったようにボロボロだったが、そんな事は関係ない。
遂に遂に、憧れの'62 Jazz Bass を手に入れたのだ。
家に帰ると早速、ジャコと同じ【ロトサウンド】のラウンドワウンド弦を張って、いつまでもいつまでも弾いていた。
その後、既にかなり減っていたフレットを全て交換した。
嬉しい事に音は変わらなかった。
ライヴにも度々登場しているし、小椋佳さんのアルバム『未熟の晩鐘』の3曲目“真夜中のキャッチボール”のレコーディングにも使った。
やはりベースの中のベース。
特に中域の芯がしっかりと出るから、楽曲の中に埋没しない。
何を弾いても、音楽的に心地良くフィットする。
言うまでもなく、私が最も大切にしているベースである。
そしてどんどん使う様にしている。
棺桶にまで連れて行きたい一本である。
(写真撮影:光齋昇馬)
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