Conde Hermanos "Paco De Lucia" '04

  • ジャーマン・パイン単板(トップ)
  • ハカランダ単板(裏・側板)
  • マホガニ(ネック)
  • エボニー指板

 

このギターは、私の友人でテレビドラマ・プロデューサーのN氏の所有物であった。
彼は大変なギターコレクターであり、ギターリストでもある。

'06年3月。
彼のプロデュースするドラマに出演中
「フラメンコギターに興味ありませんか?」
と突然聞いて来た。
「もちろんあります。パコ・デ・ルシアなんか大好きです。」
と答えると
「実はコンデ・エルマーノスの【パコ・デ・レシア・モデル】を持っているんですが、弾いてみますか?」
もちろん
「弾きます!!!」
と即答。

彼はスペインのコンデ・エルマーノスの工房に直接注文して、作ってもらったそうである。
正に本物なわけだ。
お値段も半端では無い。
'92年にスペインで開かれた【Guitar Legends】のステージでも、パコ・デ・ルシアはコンデ・エルマーノスのこのシグネーチャー・モデルを弾いていた。
WOWOWの放送で観たが、物凄い演奏に鳥肌がたったものだった。

 

ジャーマン・パイン単板のトップ。
フラメンコ・ギターの特徴である透明シール状のガードが貼付けられている。
指板はエボニー製。
指板トップにもサイドにもポジションマークは一切存在しない。

 

 

ボディー側板とバックはハカランダ製。贅沢である。
ネックはマホガニー製。目が詰んでいる。

 

 

ボディー側板とバックはハカランダ製。贅沢である。 ネックはマホガニー製。目が詰んでいる。

 

ヘッドの先端の形がコンデ・エルマーノスのギターである事を表している。
全てがハンドメイドの芸術品的風格とオーラを放っている。
目の詰まったエボニー製の指板が美しい。

 

サウンドホールを覗くとパコ・デ・ルシアのサインが見える。

 

 

数日後、撮影現場に彼が【パコ・デ・ルシア・モデル】を持って現れた。

ドキドキしながら弾いた。

凄い音だ!!!
こんなに響くギターにはお目にかかった事が無い。
音が一音一音ハッキリと前に飛び出して行く。
とてもパコの様に弾ける筈もないが、ナンチャッテ風フラメンコを弾いて大はしゃぎした。
N氏は何と、パコの曲をコピーしていた。
バリバリと弾く様は圧巻。
驚きであった。

すると彼が
「梅雀さんにこのギターをお貸ししますから、ジャンジャン弾いてやってください。」

というではないか。
「ほんとうにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?♪♪♪」
もう大興奮である。

という訳で、このギターが我家に来たのである。


フラメンコ・ギターは初めてだし、クラシック・ギターもあまり弾いた事が無い。
ドギマギしながら弦を張り替えた。
パコ本人がどんな弦を張っているかは分からないが、取りあえずオーガスティンのレッドを張った。
どうもテンションが高すぎる。
やはりフラメンコ専用の弦でなければ駄目なのだろうか。

それでも一生懸命弾き捲った。
音の大きさと存在感は、私が弾いても凄いと思う。
気持ちが良い♪

『信濃のコロンボ』にレギュラーで出演していた伊吹康太郎さんは、伊吹吾郎さんの御子息。
親子でフラメンコ・ギターを演奏する事でも知られている。
グッドタイミングな事に、丁度親子揃って『信濃のコロンボ12』に出演なさったので、早速弾いてもらった。
やはりチャンと習って勉強した人は違う。
雰囲気といい、溜めやアタック感がフラメンコになっていた。
ついでに弦の張り方とかも教えてもらった。

それからはパコ・デ・ルシアのCDも買い捲った。
見事な演奏の数々に驚嘆し、聴いているだけですっかり芸術的な気分に浸っていた。



借りっ放しで一年半以上経った。
しかしこのギターを見ていると、強いオーラが出ていて何やら敷居が高く、勿体無い事に、ちっとも弾いていなかったのである。

こんな事ではN氏の思いにも応えられないと思っていたら、
〔フラメンコ・ギターが弾ける人物の役〕の話が舞い込んで来た。
しかしまだ全く弾けていないので躊躇していた。
そんな矢先にN氏から
「ライヴでフラメンコを弾くのでギターを返して頂きたい」
とメールが来た。

何と言うタイミング!?
ちなみにN氏はこのドラマとは何の関係もない。
が、このN氏のメールで私のチャレンジ心に火がついてしまった。
フラメンコはそんなに簡単に習得出来るものではない。
が、チャレンジしてみなければ分からない。
よし。やってみよう。
決心した。
そうなると、このギターが欲しくてどうにもならなくなってしまった。
「返してくれ」と言っている人に、逆に「譲ってくれ」というのは些か図々しいとは思ったが、
思い切って
「このギターを譲って頂けないでしょうか?」
と訪ねたところ、なんとなんと快諾されたのである!!!
信じられないくらい嬉しかった♪


'08年の年明け早々一番のビッグな出来事だった。
ずっとこのギターが私の物になる日を夢見ていた。
大切な宝物のギターを譲って下さるN氏の、私に対する友情と信頼に身の引き締る思いである。

このギターを弾いていると、音楽の世界観が変わって来る様な気がする。
音使いに対する意識が変わり、いつもと違う曲が思いついたりもする。
出音に説得力があるのだ。
やはり凄いギターなのである。

'07年10月に劇団から独立し、新しい人生を歩み出した私に、大きなパワーを与えてくれそうだ。

Nさん。
本当にありがとうございます!!!
このギターは一生、大切に可愛がっていきます。



(写真撮影:光齋昇馬)

 

 

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